売掛金を活用した資金調達手段として、ABL(Asset Based Lending)とファクタリングはしばしば比較されます。どちらも売掛債権を起点に資金を確保する点では共通していますが、仕組み・コスト・会計処理・リスクの考え方は大きく異なります。
本記事では、ABLとファクタリングの違いを構造的に整理し、企業の状況別にどちらが適しているのかを実務目線で解説します。
ABL(売掛金担保融資)の基本については、以下の記事もあわせて参考になります。
ABLとファクタリングの基本構造
ABLとは
ABLは、売掛金や在庫などの事業資産を担保に金融機関から融資を受ける方法です。あくまで「借入」であるため、返済義務があり、金利が発生します。担保資産の評価に基づいて融資枠が設定され、事業の回転に応じて枠が増減します。
ファクタリングとは
ファクタリングは、売掛債権を第三者(ファクタリング会社)に売却し、期日前に現金化する手法です。借入ではなく「債権売却」であるため、返済義務はありません。その代わり、手数料が発生します。
会計・財務上の違い
貸借対照表への影響
ABLは借入金として計上されるため、負債が増加します。一方、ファクタリング(ノンリコース型)は売掛金の消滅として処理され、負債は増えません。
財務指標への影響
ABLは負債比率を悪化させる可能性がありますが、安定的な資金調達として評価される場合もあります。ファクタリングは一時的な資金化として扱われることが多く、継続利用には注意が必要です。
コスト構造の違い
ABLのコスト
- 金利(年2〜6%程度が目安)
- 担保評価・管理手数料
- 契約事務手数料
長期利用では、総コストが比較的抑えられるケースがあります。
ファクタリングのコスト
- 手数料(数%〜20%程度)
- 契約形態による追加費用
短期資金化には向いていますが、継続利用するとコストが膨らみやすい点が特徴です。
資金調達スピードと柔軟性
ファクタリングは審査が比較的簡易で、スピード重視の資金調達に向いています。一方、ABLは導入までに一定の準備期間が必要ですが、導入後は安定した資金供給が可能です。
リスクと注意点の比較
ABLのリスク
- 管理・報告業務の負担
- 担保評価低下による融資枠縮小
- 借入依存度の上昇
ファクタリングのリスク
- 高コスト化
- 取引先への通知リスク(2社間・3社間)
- 資金繰りの根本改善につながらない可能性
どちらを選ぶべきか(ケース別整理)
ABLが向いているケース
- 売掛金取引が安定している
- 中長期で資金調達を行いたい
- 成長フェーズにある
ファクタリングが向いているケース
- 急ぎで資金が必要
- 一時的な資金不足を補いたい
- 借入を増やしたくない
併用という選択肢
ABLとファクタリングは排他的な関係ではありません。短期的な資金需要はファクタリング、中長期の運転資金はABLといった併用戦略も現実的です。
まとめ
ABLとファクタリングは、目的・期間・コスト構造が大きく異なる資金調達手段です。自社の資金ニーズと財務状況を踏まえ、最適な手法を選択することが重要です。

