ABL(Asset Based Lending/売掛金担保融資)は、事業資産を活用した柔軟な資金調達手段として有効ですが、導入前の準備や理解が不十分なまま進めると、想定外のコスト増や融資枠縮小といった問題が発生する可能性があります。ABLは「導入して終わり」の融資ではなく、導入前の設計と導入後の運用が成否を大きく左右します。
本記事では、ABL導入を検討する企業が事前に確認すべきポイントをチェックリスト形式で整理します。実務で頻出する論点を網羅し、失敗を回避するための判断材料として活用できる内容にまとめています。
チェック① ABLの目的を明確にしているか
ABL導入にあたって最も重要なのは、「なぜABLを使うのか」という目的を明確にすることです。資金繰り改善、成長投資、季節変動への対応など、目的によって適切な設計は異なります。
- 一時的な資金不足の解消か
- 中長期の運転資金確保か
- 成長フェーズの資金需要対応か
目的が曖昧なまま導入すると、過度な借入や管理負担の増大につながる恐れがあります。
チェック② 担保となる売掛金の質は十分か
ABLの中心的な担保は売掛金です。売掛金の「量」だけでなく「質」が評価されます。
確認すべきポイント
- 売掛先の信用力(上場・大手・長期取引など)
- 回収サイト(30〜60日が望ましい)
- 過去の回収遅延・貸倒れの有無
売掛先が特定企業に集中している場合、集中リスクとして評価が下がることもあります。
チェック③ 在庫を担保に含める場合の管理体制
在庫を担保に含めるABLでは、在庫管理の精度が重要になります。在庫の回転率、市場性、保管状況が評価対象となります。
- 定期的な棚卸が実施されているか
- 帳簿在庫と実在庫が一致しているか
- 滞留在庫が過度に多くないか
在庫管理が不十分な場合、担保評価が大きく下がる可能性があります。
チェック④ 社内の管理・報告体制は整っているか
ABLでは、売掛金・在庫の状況を定期的に金融機関へ報告する義務があります。管理体制が整っていないと、日常業務に大きな負担が生じます。
- 月次試算表を作成できているか
- 売掛金・在庫一覧を迅速に提出できるか
- ABL専任の担当者を置けるか
報告遅延や数値の不整合は、金融機関からの信頼低下につながります。
チェック⑤ 金利・手数料を「総コスト」で把握しているか
ABLのコストは金利だけではありません。契約時手数料、担保評価手数料、管理手数料などを含めた「総コスト」で判断する必要があります。
- 年率金利はいくらか
- 初期費用・月額費用はあるか
- 他の資金調達手段と比較して妥当か
短期的な資金調達であれば、ファクタリングの方が適している場合もあります。
チェック⑥ 融資枠が変動するリスクを理解しているか
ABLは事業回転に連動して融資枠が変動します。売上減少や売掛先の信用悪化が起きた場合、融資枠が縮小する可能性があります。
この変動リスクを織り込まずに資金計画を立てると、資金繰りが不安定になる恐れがあります。
チェック⑦ 他の資金調達手段との併用を検討しているか
ABLは単独で使うよりも、銀行融資やファクタリングと併用することで効果を発揮するケースが多くあります。
- 長期資金:銀行融資
- 運転資金:ABL
- 短期資金:ファクタリング
役割分担を明確にすることで、資金調達の安定性が高まります。
チェック⑧ 金融機関との情報共有体制
ABLは「管理型融資」であるため、金融機関との継続的なコミュニケーションが重要です。問題が発生した場合、早期に共有する姿勢が信頼関係を維持します。
チェック⑨ 導入後の出口戦略を考えているか
ABLは永続的に使い続けるものではありません。将来的に銀行融資へ移行する、資金繰りが安定したら縮小するなど、出口戦略を考えておくことが重要です。
チェック⑩ 専門家への相談を検討しているか
ABL契約は内容が複雑なため、税理士や財務アドバイザーなどの専門家に相談することで、リスクを大幅に減らすことができます。
ABLの基礎や活用の考え方については、以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
ABL導入を成功させるためには、事前準備と理解が不可欠です。本記事で紹介したチェックリストをもとに、自社の状況を整理し、無理のない形でABLを活用することが重要です。
ABLは正しく使えば、資金繰りの安定と事業成長を支える強力な手段となります。

