ABL(Asset Based Lending/売掛金担保融資)は、事業資産を活用した柔軟な資金調達手段として注目されていますが、導入や運用を誤ると、かえって資金繰りや経営に悪影響を及ぼすケースもあります。ABLは「使い方」が極めて重要な融資手法です。
本記事では、実務でよく見られるABLの失敗例を整理し、それぞれの回避ポイントを詳しく解説します。ABL導入を検討している企業が、同じ失敗を繰り返さないための指針として活用してください。
ABL導入を進める前に、基本的な仕組みと注意点を整理しておきましょう。
失敗例① 管理負担を軽視して導入した
ABLでは、売掛金や在庫の状況を定期的に金融機関へ報告する義務があります。導入前にこの管理負担を十分に理解していないと、現場の業務が逼迫し、結果として報告遅延やミスが頻発することになります。
なぜ問題になるのか
報告遅延や数値の不整合は、金融機関からの信頼低下につながります。最悪の場合、融資枠の縮小や契約解除といった事態を招く可能性があります。
回避ポイント
- 導入前に報告業務の内容と頻度を確認する
- 経理・財務体制を事前に整備する
- 担当者を明確に決める
失敗例② 資金繰り改善だけを目的に導入した
ABLを「とりあえず資金が回るようにするための手段」として導入すると、根本的な問題が解決されないまま、借入依存度が高まる危険があります。
なぜ問題になるのか
ABLは売掛金や在庫が前提となるため、事業が縮小すると融資枠も縮小します。収益構造が改善されていない場合、資金繰りが再び悪化する可能性があります。
回避ポイント
- 事業改善計画とセットで導入する
- ABLの位置づけを明確にする
失敗例③ 売掛先の集中リスクを見落とした
売掛金が特定の取引先に集中している場合、その取引先の信用悪化がABL全体に大きな影響を及ぼします。
なぜ問題になるのか
主要取引先の支払い遅延や倒産が発生すると、担保評価が一気に下がり、融資枠が縮小します。
回避ポイント
- 売掛先の分散を意識する
- 主要取引先の信用状況を定期的に確認する
失敗例④ 在庫評価を過信した
在庫はABLの担保として利用されることがありますが、すべての在庫が同等に評価されるわけではありません。
なぜ問題になるのか
滞留在庫や市場性の低い在庫は、評価が大きく下がります。想定していた融資額を確保できないケースもあります。
回避ポイント
- 在庫回転率を常に把握する
- 棚卸を定期的に実施する
失敗例⑤ 金融機関とのコミュニケーション不足
ABLでは、金融機関との継続的な情報共有が不可欠です。問題が発生した際に報告を怠ると、信頼関係が損なわれます。
回避ポイント
- 定期的な報告・面談を行う
- 問題があれば早めに共有する
ABL導入を進める前に、基礎知識と注意点を整理しておきましょう。
ABLを成功させるための考え方
ABLは単なる資金調達手段ではなく、「事業管理の仕組み」として捉えることが重要です。適切に運用すれば、資金繰りの安定だけでなく、経営の可視化や改善にもつながります。
まとめ
ABLには明確なメリットがある一方、導入や運用を誤るとリスクも伴います。よくある失敗例を事前に理解し、適切な準備と運用体制を整えることで、ABLを経営にとって有効な武器として活用することができます。

